【要点まとめ】おとしどころの見つけ方 世界一やさしい交渉学入門
2020.05.02
交渉の心構え
- 感情的になった時点で交渉失敗。
交渉相手の「人物」に対する感情よりも、解決しなければいけない「問題」を優先する。
- 表面的な要求(=「立場」)だけに注目すると、水掛け論になってしまう。
背後にある本音(=「利害」)を探って、本質的な話し合いをする。
- 相手と自分の利害に「ズレ」があれば、交換取引(自分がコレをする代わりに、相手にアレをしてもらう)を通して、落としどころが見つかりやすくなる。
- 新しい利害が発覚すれば、よりよい落としどころが見つかるかもしれない。
「少しワガママ」に思えても、お互いのためにもまずは要求してみる。
- 交渉にかかる「取引費用」(準備にかかる時間や精神的ストレス)と交渉しなかったときの「機会費用」(徐々に増えていく利益や時間の損失)を比較する。
基本的には、早めに交渉するのがおすすめ。
- 交渉の気まずさは理想的な気まずさ。
ビジネスでは、効率的に作業がこなせる「ワーキング・リレーションシップ」が大切。
BATNAという考え方
- BATNA(バトナ)とは「その交渉が決裂したときの最善の代替案」のこと。
これを事前に準備しておけば、交渉中に出てきた相手の提案を受けるかどうかの基準になる。
- 自分にBATNAがあるように、相手にもBATNAがある。
その2つのBATNAの間に落としどころがある。この「合意可能領域」をZOPA(ゾーパ)という。
- BATNAがなければ、相手の言いなりになるしかない。これは何事においても同様。
現実的な代替案を常に準備できるようになれば、相手に搾取されることはなくなる。
- 1つの条件や手段しかないと思い込んでしまうと、落としどころが見つかる可能性が狭まってしまう。
あくまで「自分の利害を満たすこと」を目的として、幅広い視野で解決策を探す。
- 交渉は短期的な駆け引きだけではない。
特に、ビジネスの場合は、中長期的に考えて妥当な条件かどうかをよく考える。
- 落としどころが見つかった後には、それが本当に実現されるか、不確実性を把握しておく必要がある。
場合によっては、小さい規模で契約を交わしたり、契約に柔軟性を持たせるなどの対策が必要になる。
多者間交渉の基本
- 何かのプロジェクトを始める時には、まず初回に「誰も否定できない目的」を皆に認識してもらう。
もしネガティブな意見が出てきたら、「リフレーミング」でポジティブに言い換える。
- プロジェクトメンバーの選定では、役割分担が重要。
この関係者を「ステークホルダー」という。メンバーを集める場づくりから、既に交渉は始まっている。
- 複数人で打ち合わせを重ねる時には、話し合いの「地図」であるプロセスマップが必要不可欠。
その時々で何を決めるかが明確になれば、集めるメンバーの削減や時間の節約につながる。
- 大人数の会議では、誰が何を言ったかホワイトボードなどに記録しておく。
記録は会議の後にメンバーに共有して次回に持ち寄ると、話し合いの効率化につながる。
- 複数人で何かを決める時は、それぞれのメンバーが最も重視する論点(利害)を把握して、事前に落としどころを予測しておく。
- 合意形成の場では、個人の思い込みなどの「低質な情報」を排除して、専門知識や具体的な数字などを重視すべき。
全ての話し合いは交渉
- ビジネス、プライベートに関係なく、目的のある話し合いは全てが交渉。
感情的になって「取り返しのつかない一言」を口にしないように、冷静に話し合う。
- 世の中の揉め事の多くが立場の食い違いから生まれる。
プライベートでこそ、背後にある利害を探って、本質的な話し合いができるように意識する。
- 利害が多すぎる時には、全て書き出して優先順位をつける。
そして、お互いの優先順位が高いもの同士をすり合わせる。利害のズレを活かし合えるのが本当に「仲のいい」関係。
- プライベートの関係においても、BATNAを意識することで感情的になることなく、自分の納得のいく判断をすることができる。
- 親しい間柄だからこそ、相手に無理に合わせるのではなく、お互いの利害を打ち明けるべき。
そうすることではじめてお互いに納得のいく落としどころが見つかる。
- 何かを選択する時には、「それが自分の利害を満足させるのかどうか」をまず考える。
世間の評判や心理的なトラップに惑わされないように要注意。
駆け引きの正しい進め方
- 何事においても「一社決め打ち」はNG。
取引費用と機会費用を考慮しながら判断すべきだが、基本的にはBATNAを持っておく。
- 相手のBATNAがわからないからこそ、譲歩する動機が生まれる。
交渉相手に自分のBATNAを知られたら、その時点で交渉は「負け」。絶対に知られてはならない。
- ZOPA(ゾーパ)は、落としどころの見取り図。これを頭の中に描くことで、
交渉中に相手が出してきた提案が妥当かどうか判断できる。
提案がどうしてもZOPA内に位置しない時は、無理せず交渉を止めるべき。
- 相手のBATNAの弱点を突くのは交渉の戦略の1つ。
あらかじめ自分のBATNAの弱点を把握して交渉に臨めば、必要以上にプレッシャーを感じることなく、冷静に判断できる。
- お互いの利害を伝え合うことで、よりよい落としどころに近づいていく。
このように、複数の利害のズレをまとめる交渉を「統合型交渉」という。
- 感情的になった時点で交渉は失敗。もし自分が感情的になってしまったら、冷静な第三者を巻き込んで調停してもらう。
代表者同士の話し合い
- 交渉の目的は、敵・味方に分かれることではなく、お互いが満足できる落としどころを見つけること。
派閥ができそうになったら、「総論賛成」で目的を再認識させる。
- 全員の合意よりも、大多数の合意を目指すべき。
プライベートでの対立は特に、それぞれが好きなことをできるようにした方が、落としどころが見つかりやすい。
- ただ集まることが目的になってしまうと、話はいつまでたっても前に進まない。
プライベートでも、何かを決める目的がある集まりでは、「アジェンダ」を用意する。
- ホワイトボードがなければ、付箋紙を使ってアイデアをまとめる。
似たアイデアをまとめて並べたり、関連性を整理すると、合意形成がスムーズになる。
- 代表者は、メンバー全員の事情を配慮し、意見の取りこぼしがないか注意する必要がある。
家族構成や職業などでカテゴリー分けする「ステークホルダー分析」を行ったり、代表者以外の人に意見を聞くのが有効。
- スピードだけを重視した一方的なリーダーシップでは、「代表性」に欠ける恐れがある。
自分の意見を通すのではなく、みんなの意見をまとめ上げる「ファシリテーティブ・リーダーシップ」も重要。
参考
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